戦後小学校家庭科教育の実践の変遷に関する研究

―東京都教育委員会教育研究員研究報告書より―

中村 清香

 

フローチャート : 処理: 論文の章構成
第1章	はじめに
第2章	戦後家庭科教育の実践の変遷―先行研究より
第3章	分析方法
第4章	導入の変遷
第5章	展開の変遷
第6章	まとめの変遷
第7章	教材・教具の変遷
第8章	まとめ
[目的]教師にとって授業をどのように構成していくかは重要な課題である。そこで、私は授業実践記録から家庭科の授業構成を探ろうとした。先行研究によれば、家庭科の授業構成も時代と共に変化しているという。そこで、授業実践記録が継続的に得られた「東京都教育委員会教育研究員研究報告書家庭」の記録から、40年間の授業実践の変化を探ることとした。1947年に家庭科が成立してから、57年という歳月が経過した。家庭科は、新設されて以来、さまざまな問題を一つ一つ克服し、現在の「男女共修家庭科」が誕生した。私は、現場の教員の家庭科教育の実践について学ぶにつれてとても興味を持った。

そこで、戦前の女子用教科としての性格を十分に払拭しきれない状況から発足した戦後家庭科がどのような実践を経て現在の家庭科に推移してきたのかをまとめる。

[方法] 1963年度から2002年度の「東京都教育委員会教育研究員研究報告書家庭」(1967 1970年度、1971 1972年度、1978年度、1981 1982年度、1986年度、2001年度を除く)の本時案125事例を分析対象とする。これらを「導入の変遷」「展開の変遷」「まとめの変遷」「教材・教具の変遷」について、全体的な特徴や、年代からみた特徴、領域ごとにみた特徴について分析した。

[結果・考察]導入:導入では、「本時の内容を知る」「事実の確認の内容を知る」などが多いため、¥「知る」という学習活動が多い。また、「話し合う」は、1970年代までにピークを迎え、「発表する」では、1980年代以降頻出するようになったことがわかり、学習活動の方法が入れ替わった。1990年代から2000年代にかけては、学習活動の方法が多様化している。

展開:展開では、展開の数として、「4 5活動」が主流であった。展開の数が多いことで、学習活動の方法が35種類に及んだ。中でも、「発表する」が135回と頻出している。また、学習のグループ規模としては、3つの形態の組み合わせが多かった。これは、展開の数に関係しているといえる。特殊な授業全体の形態として、1960年代は他の年代よりも用いられていた。これは、教師の「自主教材」がまだ少なかったことに影響していると考えられる。

まとめ:まとめの学習活動の方法は、「次時の予告を知る」が35事例と一番多かった。まとめとしては、妥当な結果である。「まとめる」や「反省する」「感想を話す・書く」といった学習活動の方法は、まとめの特有の方法である。また、学習のグループ規模としては、「全体」が78事例であった。

教材・教具:視聴覚教材として、スライドやOHPやTPが1986年度まで主流であったが、1988年度以降テレビ、ビデオが主流に変わっている。また、1999年度以降インターネットの活用が情報化の影響を感じさせる。

[まとめ]戦後小学校家庭科教育は、年代ごとに分けて分析することにより変化していることが明らかになった。教師の教材研究の結果、児童主体の授業内容になるように構成しようとした。学習活動の方法、学習確認箇所、学習のグループ規模や教材・教具など、児童、社会に応じて変化し続けていくと思われる。